竜宮の鐘 昔近江国に粟津冠者という武勇の士がありました。お寺を建てましたがまだ釣鐘がないので。釣鐘を鋳る鉄を買って来ようと思って、越前から船に乗って、出雲国へ鉄を求めに出かけました。日本海を船で走らせていますと、急に風が悪くなり、浪が打ち込んで来て、どうしても船が進みません。船頭も乗客も皆困っていた所へ、何処からともなくごく小さな小舟に、子供が唯一人で楫を取って、近くまでやってきました。その船に近江の粟津冠者という人が乗っているだろう。急いでこの小舟に乗り移ってくださいと言いました。どういうわけかは分かりませんでしたが、粟津冠者はその言う通りに、今来た小舟に乗り移りました。そうすると浪も風もなくなって、親船は少しも走りません。しばらくの間ここで待っているように言いつけて、小舟は忽ち海の底へ入っていくかと思うと、そこがもう竜宮の立派な御殿の門でありました。竜王が粟津冠者を迎えに出て来られまして、あなたは世に隠れもない弓矢の達人であると知って、是非ともお頼み申したいことがある。今この竜宮には怖るべき大敵があって、毎日家来を引き連れて攻め寄せてくる。どうかその弓勢を以って我々を助け、今日の仇を打ち滅ぼしてもらいたいと言われました。粟津冠者は名誉な頼みである故に、早速承知をして竜宮の高殿に昇り、支度をして待っておりますと、やがて遠くの方から見上げるほどの大蛇が、数多くの同類を引き連れて攻めてきます。その大きく開いてくる口を目掛けて、真正面から鏑矢を射放して、舌の根より喉の下まで射貫きました。それに恐れをなして大蛇が逃げて帰ろうとするところを、又一箭今度は中程を射掛けたそうであります。竜王を始めとし、多くの臣下達も大喜びで、何を今日の骨折りの御礼にしたらよいかと問いましたが、粟津冠者の今度の旅行は、新たに建てたお寺の釣鐘がまだないので、その材料の鉄を買う為に、海を渡って出雲まで行こうとしているだけで、他には何の望みもないと言いますと、それならば安い事だと、早速竜宮の御殿に掛けてあった鐘をはずして、これを御進物に贈られました。近江の粟津の広江寺の釣鐘が、竜宮からのお土産の鐘であったと言いますが、そのお寺はもうとっくにありません。武蔵坊弁慶が背負って行って、比叡山の中腹から転がしたという今の三井寺の大釣鐘が、その竜宮の鐘だという話もありましたけれども、確かなことはもう誰にも分かりません。

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作者:Miyu
婷婷嫋嫋疏離,飄飄搖搖相依。